話し合っておきたい
「子ども」のこと
出産とその後の生活について
-子どもを迎える段階になったおふたりに知っておいてほしいこと-
妊娠・出産では「もらえるお金」が充実しています
妊娠から出産までは、健康保険組合や地方自治体などからさまざまなお金を受け取ることができます。知っておくと安心につながりますね。なお、「もらえるお金」については、2024年3月時点の情報です。保険や税制、各種制度に関しては将来改正される場合もあります。また、手続き・届け出の方法も随時変わる可能性や、自治体・契約会社によって異なる場合があります。
子ども1人につき基本50万円(妊娠22週未満の場合は48.8万円)。健康保険組合加入者または被扶養者のうち、妊娠85日以上で出産あるいは流産した人が対象となります。出産前に病院へ書類を提出すれば、分娩費や入院費、新生児の検査費用など出産にかかった費用を、健康保険組合が病院に直接支払ってくれるため、窓口での支払いは50万円を超えた金額のみとなります。出産費用は病院によって違うので、予算も考えて選びましょう。
妊娠が確定すると市区町村の役所や保健所に行き、母子手帳を発行してもらいます。その際に、原則14回分の「妊婦健康診査費用補助券」を受け取れます。基本的な妊婦健診はこの券を持参すれば助成範囲内の金額までは支払いをせず受けることが可能。助成内容や助成額はお住まいの自治体によって異なります。また妊婦健診の費用は病院によって異なるので、健診費用が高い病院では、補助券の金額を上回ることもあります。 補助券の発行自治体以外の地域で妊婦健診を受けた場合でも、産後に検査の領収書と余った補助券を自治体に郵送すれば検査の料金が還付されます。補助券が使えなかったときの領収書は産後まで保管しておきましょう。
正常分娩での出産以外に帝王切開など健康保険適用内の治療を受け、1カ月の医療費が自己負担限度額を超えた場合に、超えた額を補てんしてくれる制度。所得により限度額が異なります。
1年間の医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)を超える場合、確定申告すると払い過ぎた税金が戻ります。家族全員分をまとめての確定申告でも申請可能。医療機関への交通費なども申告できるので領収書は保管しておきましょう。
そのほか、出産前後に産休を取得した場合に健康保険からもらえる「出産手当金」、勤務先やお住まいの自治体によってもらえる「出産祝い金」、妊娠届出時と出生届出後を通じて合計で10万円相当の支援が受けられる「出産・子育てクーポン」なども。もらえる条件や手続きなどは勤務先や自治体にそれぞれ確認しましょう。
妊娠・出産にはさまざまなお金がかかりますが、一方でこのように「もらえるお金」もたくさんあります。「出ていくお金」と「もらえるお金」を知っておくことがお金に関する不安を軽減することに役立つかもしれません。
そのほか、本人やパートナーの勤務先によっては「出産祝い金」をくれるケースや、勤務先の健康保険に加入している人(被保険者)が出産のために会社を休み、その間給与の支払いがなかった場合に受け取ることができる産休中の生活の保障を目的とした「出産手当金」が受け取れることも。条件などは勤務先に確認しましょう。
もらえるお金がある一方で、「妊娠検査の費用」や「マタニティやベビー用品の購入」などの出費もあります。「もらえるお金」と「出ていくお金」を知っておくことがお金に関する不安を軽減することに役立つかもしれません。
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大竹のり子先生
株式会社エフピーウーマン代表取締役
ファイナンシャルプランナー出版社の編集者を経て2005年4月に「エフピーウーマン」を設立。 雑誌、講演、テレビ・ラジオ出演などのほか『お金の教養スクール』を通じて女性がお金の知識をつけることの大切さを伝えている。『なぜかお金に困らない女性の習慣』(大和書房)、『ライフプランから考える お金の増やし方』(ナツメ社)など著書・監修書は70冊以上に及ぶ。
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結婚式もこれからですが予算が足りません。
結婚式はあきらめたほうがよいでしょうか?
これから出産を控えていても、結婚式をあきらめる必要はありません。ポイントは「ふたりでお金をかけたいところと、我慢することを話し合い、メリハリをつけてお金を使うこと」。妊娠中でも予算を決めてお金の管理をしっかりすれば、結婚式を挙げたからといって後々お金に困ることは避けられるはずです。
また、うまくやりくりすれば、ご祝儀を貯蓄に回すことも可能。ただ、ドレスの選択肢が少なくなってしまうことや、母体に何かあったときにはキャンセル料を支払うことが必要なケースもあるので、ふたりでよく話し合って決めましょう。
出産前後に「里帰り」する?しない?
出産は大きな仕事。ましてや初めての出産であれば、不安に感じることも多いでしょう。そんなとき、出産前後に「里帰り」するということを一つの選択肢として考えてみてはどうでしょう。
出産後は母体へのダメージが大きいため、十分に回復するまでしっかりと体を休ませることが大切です。そのようなときはできるだけ多くの人の手を借りたいと、産後は実家に里帰りをして生活のサポートをしてもらう人も多いようです。2022年に行ったゼクシィBabyの調査によると、「産前に里帰りした」が25.1%、「産後に里帰りした」が23.0%と半数近くが出産前後に里帰りしていることがわかりました。
産前のうちに里帰りをして実家近くの病院で出産する場合もあれば、産後に赤ちゃんを連れて里帰りする場合もあります。いずれのパターンにおいても、里帰りは産後サポートとして重要な選択肢のひとつであることを認識しておき、里帰りをしない場合は別のサポート手段を考えておくとよいでしょう。
里帰りした? 産前?産後?
産前に里帰り
母が予定日前の数週間休みを取ってくれたり、大学生の妹がリモート授業で日中は家にいたりと、常に誰かが近くにいてくれる環境で初出産を迎えたかったので、産前に里帰りしました。(Aさん)
産後に里帰り
初めての出産でわからないことが多かったのと、体が万全ではない状態で平日に赤ちゃんとふたりで過ごすのに不安があったため、実家でお世話になりました。(Sさん)
里帰りしなかった
妊娠中や出産前後、夫と離れたくなかったため里帰りしませんでした。変わりゆく私の体型や体調の悪さなどを夫に間近で感じてもらい、父になる自覚を持ってほしいと思いました。(Kさん)
そのほか、出産前後に里帰りした時期や、メリット・デメリットの詳細は、ゼクシイBabyをご覧ください。
男性育休の制度の概要と、現状の取得率推移について
男性の育休取得者は増加傾向!
2022年10月から出生時育児休業が施行され、男女とも仕事と育児が両立できる「男性の育児休業(以下育休)」について、企業や労働者、その家族にとって大きな変化がもたらされました。
男性の育休取得期間は、原則子どもが1歳(一定の場合は、最長2歳)に達するまで取得することができ、育休とは別に「産後パパ育休制度」を利用すれば、産後8週間以内に4週間(28日)を限度として、2回に分けて休業が取得できます。それぞれの取得には申出期限があるので、申請時には注意しましょう。
厚生労働省の「令和4年度雇用均等基本調査」によると、令和4年の男性の育休取得者の割合は17.13%で、令和3年度の13.97%から3.16%伸びています。
男性育休を取得するか迷っている人には4つのヒントで考えてみて
制度によって企業の環境の整備が義務化されつつありますが、まだまだ育休取得を迷っている人もいるでしょう。育休は、仕事と家庭の円滑な両立を支援するための制度とはいえ、職場の環境によって、育休の取りやすさはさまざまです。そこで、育休取得を迷ったときに、考え方を整理する4つのヒントをご紹介します。
- POINT1
「取得できるか」ではなく「どういう父親になりたいか」考えて
育休は「取れる・取れない」ではなく、「どういう父親になりたいか」をイメージすることが大切です。ママのキャリアも含めて、家族の幸せ、自分の将来のためにできることを考えていきましょう。
- POINT2
大切なのは夫婦のキャリア観の擦り合わせ
キャリアアップしたいのか、子育てを優先して働きたいのか、夫婦でキャリアに対する考え方を擦り合わせることが大切です。パートナーの考え方によって取得期間は違ってくるので、妊娠したらまずはお互いの価値観を話し合いましょう。
- POINT3
“産後うつ”を防ぐ。 パパの力が母子の健康を支える!
特に産後2週間はうつ病を発症しやすく、ママ自身はもちろん、子どもの心身の発達にも影響があると考えられています。
産後うつは誰でもなる可能性がある病気です。パパが育休を取ってふたりで育児をすることで、母親が一人きりで慣れない育児に追い詰められる状況を防ぐことができます。
- POINT4
夫婦の絆が強固に・家計収入アップ 長い目で見るとよいこと尽くめ
父親が率先して育児に関わることで、子どもとの愛着形成ができて子育てがスムーズになります。家事も「自分ゴト」になり、その後の両立にもよい影響が出るでしょう。夫婦の絆も深まり、共働きでバランスよくキャリアを積むことで将来的には世帯収入が伸びる可能性が高まります。父親にとっても職場だけでなく、地域に知り合いが増えて世界が広がり、人生がより豊かになっていくでしょう。
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必要に応じて家事代行サービスなどを利用する手も。
育児をふたりで抱え込む必要はありません。常に育児と向き合って煮詰まってしまうと、赤ちゃんにとっても夫婦にとっても悪影響を及ぼすこともあります。可能ならご家族にも力を借りたり、家事代行、ベビーシッターなどの民間のサービスを利用してみることも検討してみましょう。大切なのは、なにもかも夫婦ふたりで育児を抱え込んでストレスフルな状況を作らないことです。